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関東の野菜

シンガポールのスーパーの棚から関東産の野菜が消えた。東京や埼玉、神奈川などの生産物が輸入停止になったためだ。個人で取り寄せていた千葉の野菜も、先週から届かなくなってしまった。こんなときだからこそ取り寄せて食べたいと思い、販売元に電話をかけたのだが、「独自検査を行っているシンガポールで、もし、汚染された野菜がみつかってニュースになったら、それこそ生産者に大きな打撃を与える」という理由で、出荷を見合わせたという。また、「安全と言い切れない野菜を出荷することはできない」とも。農薬と違って、生産者さえ自分の野菜が安全かどうか把握できないとは、なんて切ないのだろう。

自給率が限りなくゼロに近いシンガポールでは、野菜のほとんどが海外からやってくる。世界のどの地域より人気が高いのが日本の野菜。日系以外のスーパーでもたいてい「日本野菜」コーナーがあり、高くても買っていく人は多い。それだけおいしいからだ。野菜や果物ばかりではない。魚介類や肉類も日本産は特別扱い。去年、口蹄疫による豚肉と牛肉の輸入停止があったが、その解除が数年前より早くなったのは、「一度あのおいしさを知ると、他は買えないというシンガポーリアンが増えたから」という話も聞いたことがある。そんなシンガポールだから、福島や茨城や群馬など関東近県から、またおいしい野菜が届くのをみんな心待ちにしている。
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東京では「水問題」も発生して、食を取り巻く環境はさらに厳しくなっている様子。私が今東京にいたら、どんな行動をとっていただろうか。……正直、分からない。けれども、こういう考え方だけは忘れたくないなあと思った。「リスクコミュニケーションの前提議論」。

「体にいい・悪い」という話をするとき、「どのくらい」という部分はとても大切。それから、たとえ「7割の人に問題が起こる」ことでも、自分がその7割に入るかどうかはまた別の話。とすれば、これを食べたらもうダメとか、これさえ食べていればいいとか、そういうふうに考えてストレスをためこむのはいちばんよくない気が。当事者でない私が今こんなことを言ってはいけないのだろうけれど。

毎日のように不安要素が増えたり、きのうまで当たり前にあったものが手に入らなくなったり。そういう毎日がいかにストレスフルなことか。誰かと比べたりするのではなくて、自分本位に「疲れたー」「もうやだー」とワガママ言える場所が、どんな人にもありますように。
by xizi62 | 2011-03-27 16:04 | その他

東京とシンガポールのだいどころで


by 高島系子