人気ブログランキング | 話題のタグを見る

漢方薬のこと

「漢方薬って、長く飲まないと効かないんでしょう?」と、よく言われる。けれど、決してそんなことはない。たとえば、風邪をひいたとき。「ゆっくり効いて」いては間に合わないし、治ったとしても、それが自然治癒なのか、それとも漢方薬が何らかの形で関わっているのか、よく分からない。多くの人は「そういうものだ」と思っているし、「気休め」くらいにとらえられることも少なくない。

でも、これはある意味とても危険な考え方だと思う。漢方薬は、その人の体の状態に合ったものを選べば、必ず何らかの効果があるし、合わないものを飲めば、効かないどころか、逆に症状が悪化することもある。

知っている人も多いと思うが、「葛根湯」がよい例だ。体を温めながら発汗させる作用がある薬なので、「寒気がひどくて、汗がなかなか出ない」というときには向いている。けれど、のどの痛みや腫れがひどく、体がほてってしかたがないときには全くもって不向き。日本の漢方製剤は1包の量が少ないので、悪化するというよりも「効かない」という程度で済むだけの話。

だから、服用するときは「病名から漢方薬を探す」のではなく、「自分の体の中で起こっている原因を見極めて、漢方薬を選ぶ」という過程が必要だ。知識があればセルフケアにも活かせるけれど、自己判断は案外難しい。そんなときに頼りになるのが、漢方薬の使い方をきちんと分かっているお医者さんだ。

今、日本で、漢方薬が健康保険を外されるかもしれない事態となっている。例の事業仕分けである。「11月11日の行政刷新会議事業仕分けで、ワーキンググループ15人のうち11 人が賛成」という話に愕然とする。

確かに、無駄になっている漢方薬もじつは多いのかもしれない。しかし、医療費削減のために必要なのは、漢方薬を保険外にすることではなく、漢方薬を正しく使える医師を育て、漢方薬の無駄遣い&誤用を減らすことだと思う。今回のことが、漢方薬の現状について調査が進むきっかけになればよいけれど、まずは、その前にいきなり保険外などという事態にならないよう、願っている。

東洋医学会をはじめとする各団体が署名活動を行っている。日本国籍があれば、海外からの電子署名も可能。締切は11月30日(月)と12月7日(月)の2回。
http://kampo.umin.jp/

漢方薬のこと_f0003871_1384711.jpg

写真は、左上から右回りにハスの実、緑豆、竜眼、黒豆、ハトムギ、枸杞の実。こんなふうに、食材でもある漢方薬の材料も、もちろんたくさんある。どこまでが法律上の「食品」で、どこからが「薬品」なのかという線引きも、一度大きな見直しが必要なのだと思う。この話はまたの機会に。


追記:この件に関し、出産ライターの河合蘭さんが、神戸の横田直美先生に取材し、とてもよい記事を書かれている。
「仕分け」で漢方が健康保険からはずれる?
by xizi62 | 2009-11-26 16:10 | 中医学ごはん&薬膳

東京とシンガポールのだいどころで


by 高島系子