「常温」という食文化

シンガポールで出合った南インドカレーは、熱いと感じない温度のものが多かった。最初に食べたときには、南インドカレーは油分が少なく、さらっとしているので、高い温度を保つのが難しいせいだと思ったのだが、何度か食べるうちにその温度が快適となり、見よう見まねで手食をした瞬間、温度が高くない理由が腑に落ちた。

その後、カレー伝道師の渡辺玲さんに「暑いインドでは、体温より冷たいものや熱いものは、体に悪いといって食べない。特に、暑い国だからこそ冷えに対して敏感で、夜はヨーグルトを食べないという人もいる」と聞き、これまたなるほど!と思った。

一方で思い出すのは、ドイツのこと。料理も飲み物も比較的冷たいものが好まれているように感じた。そのころ私は産後の食事について調べている最中だったので、取材で会った助産師に「中医学には、産後に冷たいものをとってはいけないという考え方があるが、ドイツではどうか?」と質問したところ「そういう考えがあるのは知っているけれど、私たちはあまり気にしていない。冷たいものを食べても、特に体調が悪くなる産婦もいない」という答えが返ってきて、寒いところの人だから逆に冷たいものには慣れているのだな、と思った記憶がある。
f0003871_17424448.jpg
(写真は、バンコクのレストランで食べた生春巻き。タイの人は氷が大好きだが、料理はほどよい温度のものが多い)


夏に冷たいものを食べたり飲んだりするのは、不自然なことだとよく言われるし、私もそう思っていた。ということは、寒い冬には冷たいものを食べるのが自然?? うーん、それはいやだなあ(笑)

要するに、好みの問題なのだということに、ようやく気づく。私は常温の食べものが好きなのだ。というか、常温でもおいしいと思えるものに惹かれてしまう。熱いものは熱く、冷たいものは冷たく、という日本の文化もステキだし、私だって生ぬるい刺し身(とれたて以外!)や冷め切ったうどんは食べたくない。けれど、すべてのものが「熱いか、冷たいか」ではなくてもいい。家庭料理であればなおさらのこと。季節に応じた「常温」もひとつの食文化ととらえてみると、味覚の幅がまた広がるような気がしている。









by xizi62 | 2013-12-22 18:15 | 食べものの温度 | Comments(0)

東京とシンガポールのだいどころで


by 高島系子