ウォームウォーター

シンガポールに来て、最初に感動したこと。それは、たいていのレストランやカフェで「ウォームウォーター」を出してくれることだった。

日本のように、無料の水を出す国も珍しいけれど、温かい水が出てくるところはもっと珍しい。しかも、ふつうのグラスで出てくるので、最初は驚く。生ぬるい水なんて飲めるかい!と思う人もいるだろう。でもこれは、シンガポールには中医学の知恵が生きている、ということなのだ。

中医学には、「冷たいものは脾胃(消化器)の機能を低下させる」という考え方がある。特に、食事の前に冷たい水を飲むことは、食べものを受け入れようとしている胃の動きをわざわざ鈍くさせるようなもの、と考える。ある意味、食いしん坊の知恵ともいえるかも。けれども、冷蔵庫が普及し、生活の欧米化が進んだ最近の中国では、不必要なまでに冷やしたビールや水に出合うことも多く、ちょっと寂しく思っていたところだった。

もちろん、シンガポールでも、ウォームウォーターを頼む人ばかりではない。けれど、水を頼んだときに「冷たい水?温かい水?」と聞いてくれるだけでうれしいのだ。今は、お湯を水で割っているところが多いが、要するにウォームウォーターとは「常温の水」という意味なのだと思う。ホットではなくウォームというところが南国らしい。
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暑いところでは、体の熱をとりのぞく対策も必要。でも、冷たいものでなければ体にこもった熱をさませないわけではない。クールダウンが必要なら、そういう作用をもつ薬茶を常温で飲む。それで十分。こちらでは、あちこちに涼茶(りゃんちゃ)やさんがあって、手作りの薬茶を「常温」で売っている。砂糖がたっぷり入っているのには閉口するけれど。

冷たいものを嫌う習慣は、他にもいろいろなところで出合う。そこかしこで温かいお惣菜が買えるし、温かいデザートもたくさんある。スターバックスのような店でベーグルひとつ頼んだとしても、必ずトースターで温めてくれる。もちろん、アイスクリームも氷菓子もあるのだけれど、これはあくまで「お楽しみ」ということなのだと思う。若い層は、そこまで意識していないだろうけれど。これはどこの国でも同じかな。日本だって、沖縄のおばあは「私は熱いお茶ちょうだいねー」と言ってるもの。

蒸し暑いときに冷たいものばかりをとっていると、だんだんと湿邪(よぶんな水分)がたまり、体が重く、だるくなってくる。当然食欲もなくなる。温かい水や食べものは、暑さでばてないように体を守る知恵なのだとつくづく思う。
Commented by あさこ at 2008-12-18 06:06 x
自分の学んできたことが実証される瞬間って、とてもトキメクのでしょうね。
ところで、冬でもガブガブとビールを飲む国民がいるのだけど
どうなのかね、中医学的に。
結構、冷やされていますが。
Commented by xizi62 at 2008-12-18 11:25
その国に取材に行ったとき、「中医学では冷たいものがよくないという考え方があるのは知っているけれど、私たちは特に気にしていない」と自然療法士の方に言われました。そもそもの体が違うんだろうね。

冷やさなくてもおいしいビール&冷たいお惣菜、って印象だけど……冷えてるのね、ビール。
by xizi62 | 2008-12-15 17:51 | 食べものの温度 | Comments(2)

東京とシンガポールのだいどころで


by 高島系子